博覧会の政治学―まなざしの近代 (中公新書)



博覧会の政治学―まなざしの近代 (中公新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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博覧会という「政治」的な場について

 本書の主旨は、博覧会という場は中立的な場所ではなく、非常に「政治」的な場所であり、権力装置ともいうべき場である、ということである。そこではフーコーが述べるような微視的な権力の作用が働いているのである。
 そのことを示すために、序章と終章をのぞく各章では、「近代的なまなざし(自己をまなざす主体とし、まなざされる世界を細かく分類し序列化する視線)」がいかに人々の日常生活にいかに浸透していったのかを、帝国主義、消費社会、大衆娯楽という3つの観点から博覧会の歴史を分析することにより明らかにする。
 最終章では、博覧会という「政治」的な場をより詳しく分析する。筆者によれば、それは「視覚を特権化し、このまなざし(近代的なまなざし)のみを徹底的に動員しようとするスペクタクルの空間」である、と結論づける。

 本書は非常にわかりやすく書かれており、博覧会のみならずデパート、オリンピック、博物館などが決して中立的な場ではなく、「政治」的な場であることがよくわかる。また、フーコーの権力概念をうまく応用しており、社会学的な分析としても一読の価値があるように思われる。

万博学の入門書

万博学と呼ばれる学問は…ありません。見方によって全然違ったものになってしまうから、そもそも学問としては成り立たないのでしょう。事実、この本もそうだし、万博関係の本が図書館でどういう分類されているかを見てみるといいです。「産業」だったり「イベント」だったり「西洋史」とか「メディア」とか様々で収拾がつきません。しかし、自分のように万博にかかわり、自分にとっての万博という視座が既にしてある人が、「はて万博とは一体なんだったのか」と疑問に思ったときに、この本は読むべきでありましょう。
正直最初読んだときは、社会学や文化研究に門外漢だった私にはよくわからないところが多かった(今も、残念ながら全部理解できてない気が…)。でも、ビブリオに挙げられた本を丁寧に辿って、もう一度この本を読んでみると、驚くほど理解できたのです。
自分にとっての万博は何だったのかなあ、と思う方はたぶんこの本のどこかにピンと来るでしょう。万博って結局そういうものなのかも。

新書ですが良書です

読み応えがあった一冊です。日本の老舗和菓子屋さんも明治期のパリ万博で和菓子を出展されていましたよね。博覧会がプロパガンダだけでなく今やブランドイメージとしても確立。そもそも博覧会は何故開催されたのか・・・。興味深い内容でした。次の万博を見に行く時はこの本を読んで博覧会がその場所で開催される意味を裏読みしてみても・・・。
カルチュラル・スタディの陳腐さ

 まず、評者は愛・地球博にもオリンピックにもサッカーや野球の国際対抗戦にも<<ほとんどまったく>>興味のない人間であることを明記しておく。わたくしは常々カルスタなるものは退屈なしろものだと思っているが、残念ながら「博覧会」をつうじてその政治性を提示しようとした本書でもその根本的なつまらなさを免れていないような気がして仕方がない。もっとも、本書はカルスタというよりは、正当な社会学に近い研究ではあるが・・。部分的には「原住民」の展示とか、日本人の万博の受容形態とか、参考になる箇所はあったものの、「だから何?」と結論としては首をかしげてみたくなるのだ。
 しかし、反面それは評者がこのようなイベントの政治性ゆえに意識的にそれらに関心を持たないようにしているためかもしれない。だから、このようなイベントを好むかたにとっては逆に非常に興味深く、参考になる本なのかもしれない。よって、読者層によってはアピールする本なのだろう。
まなざしの双方向性

近代世界の成立において重要な役割を果たしたものとして、著者は近代的まなざしというものを挙げている。日本や欧米の博覧会等の例の中で著者は、消費社会や帝国主義の根底にあるのもこのまなざしであり、更にそれは双方向性を持つ、と論じていく。社会空間の持つ力というものを考えるにあたっては良い入門書と言えるのではないか。実際私にはそうであった。

終始疑問に思ったのは、著者の言うまなざしの受容は個人差があったのではということだが、それは私の様なあまのじゃくが考えることなのであろうか。

新書ではあるが、内容も濃く良書である。一読をお勧めする。



中央公論社
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梅咲きぬ

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