白萩屋敷の月―御宿かわせみ〈8〉 (文春文庫)



白萩屋敷の月―御宿かわせみ〈8〉 (文春文庫)
白萩屋敷の月―御宿かわせみ〈8〉 (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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なにしろぐっとくる表題作「白萩屋敷の月」が素晴らしい

 江戸は大川端の旅宿「かわせみ」の女主人るい、るいと恋仲の神林東吾(かみばやし とうご)、東吾の親友で八丁堀同心を務めている畝源三郎(うね げんざぶろう)、「かわせみ」の女中頭のお吉(おきち)ほか、彼らの心が通い合う姿をあたたかく描き出した「御宿かわせみ」シリーズ。今回は表題作を再読したくなり、手にとりました。
 本巻には、「美男の医者」「恋娘」「絵馬の文字」「水戸の梅」「持参嫁」「幽霊亭の女」「藤屋の火事」「白萩屋敷の月」の八編が収められています。なかではおしまいの二篇が良く、とりわけ表題作の切なさが身に染みてぐっときました。

 「白萩屋敷の月」……東吾の兄で、南町奉行所の与力を務める神林通之進(みちのしん)。彼から使いを頼まれて白萩屋敷へ行った東吾は、屋敷の主で今は御後室になっている女性・香月と言葉を交わすことになります。その話の中から浮かび上がってくる恋の想いの切ないこと。月光が夜の庭を照らす中、白い萩の花が咲きこぼれている光景の美しいこと。久しぶりに読み返して目頭が熱くなり、胸が詰まりました。
 なんでもこの作品、「御宿かわせみ」の読者アンケートの人気投票で第一位になったのだそうな。匂やかで切なく、神々しい気品すら漂わせたこの話は、まこと、シリーズ作品中の一番人気に値する名品。今回再読して、話の美しさと切なさにあらためて感じ入った次第です。



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